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January 23, 2009 メンテ&修理&小カスタム

腰上オーバーホール


K様のマーニ、腰上のオーバーホールです。オーバーホールとは、分解洗浄し、新しいガスケットを使って組み直すだけのことだと思っている方も多いようですので(たまに質問されます)、こちらのK様のエンジンを題材に、オーバーホール内容をご紹介したいと思います。ちなみに16万キロ以上ノンオーバーホールで快調に現在も走られている車両です。普段の整備&上手な扱い方の賜物ですね!


今回は腰上のオーバーホールですので、ここまでバラします。慣れていればこの状態までで30分もあれば十分です。コンロッド、ビッグエンドの状態ももちろんチェックします。


オーバーホールを一言で言うなら、「擦れて減る部分を正常な状態に戻し、本来の性能を取り戻す」ことです。バルブは1分間に数千回開閉を繰り返すので、もちろんバルブステム、バルブガイドは擦れて摩耗します。摩耗するとバルブにガタが出て、きちんと閉まりません。閉まらないと圧縮が抜けパワーダウンするわけです。


バルブのステム(軸部分)の直径を1/100の精度で、各部分測定します。擦れる部分がある一定以上減っている場合、バルブ交換になります。こちらの車両はオイル管理が良かったのでしょう、OKでした。バルブは高く付くので・・・。そして、このバルブステムが差し込まれる部分、バルブガイドは柔らかい素材で出来ており、又、OHV車の場合ロッカーアームでこじられるため、3万キロも走行すると穴が楕円に摩耗しガタが出ます。ガタが出るとバルブがちゃんと閉まらずに圧縮が抜けるばかりか、異音の原因、そしてオイルがステムを伝って燃焼室に入り込むオイル下がり(マフラーから白煙を吹く)が起こります。それぞれのバルブステムに合わせて製作し、全て打ち替えます。


これはバルブシートです。シートは正確に切削されており、バルブが閉まるとこの部分に密着し燃焼室の気密を保ちます。ですが、1分間に数千回開閉するバルブの傘がこの部分を叩くので、当たる部分が摩耗し当り幅が増えてしまいます。幅が増えると面圧が下がるわけで(ハイヒールで踏まれる方が痛いのといっしょ)、やはり圧縮が抜けてパワーダウンします。さすがに16万キロ走行のバルブシート、ベタ当り(規定の2倍くらいの当り幅)です。専用の機械でシートカット(シートを削り直す)します。合わせて、バルブの傘の部分も研磨修正して本来の圧縮を取り戻します。

ヘッドは以上のような計測、加工、修理を行うことにより新車時の性能、静粛性などを取り戻すことができます。


次はシリンダー回りです。まずはピストンからピストンリングを取外し、シリンダーに挿入、計測です。ピストンリングの合い口の隙間を測定します。ピストンリングは1分間に数千回往復するわけで、その擦れる部分が減るわけです。リングが減ると、必然的にその合い口が広がります。広がると圧縮が抜け、オイルが上がります。こちらの車両はやはり走行距離相応に、合い口は広がっておりますのでリング交換になります。


ピストンの直径を数カ所で1/100の精度で測定します。


その直径をシリンダーゲージに写し取り、シリンダーとピストンの径の差(クリアランス)を正確に測定します。これも擦れて減る部分ですね。80年代以降のBMW、そしてルマン2後期以降のグッツィはニカジルメッキシリンダーですのでほとんど減りません。もちろんこちらの車両も問題なし。ピストン、シリンダーはそのまま使用可能です。これが鉄スリーブのモデルですと、シリンダーをボーリングし、オーバーサイズピストンを入れることになり、費用もかさみます。


忘れがちなのが、バルブスプリングです。自由長を測定します。スプリングは思った以上にへたります。へたると、やはりバルブがしっかり閉まらないわけです。測定の結果、自由長は規定値内でしたが、それほど高くない部品ですので、できれば交換したいところです。


意外な所がダメになっていました。バルブリフターです。この面がカムと接触しているのですが、写真のように虫食い状態になっており、異音の原因にもなります。これもダメなものは交換になります。

以上、こうした内容が腰上のオーバーホールになります。もちろん各部のカーボン落とし、洗浄、ガスケットやシール類の交換が含まれるのは言うまでもありません。精度の高い器具による測定と、その測定結果をもとに行う部品の摩耗限度の正確な判断、そして組み付け時のさじ加減、そして作業スピードが、我々プロとしての見せ場だと思います。

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コメント

プロの仕事を感じます!
仕上がり、わくわくしながら待ってます!
と言いながら、請求書をドキドキしながら待ってます・・・。でも重症じゃないようで一安心(?)です。
あっ、走行距離16万kmではなく12万kmだったりして・・・。

12万キロでしたね。日頃のメンテ、そしてしっかり乗られているので全然重症ではなく、キレイに摩耗していました。リフターだけは意外でしたが、これは素材の問題かもしれませんね。お見積お送りします~。

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